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こちらの記事は、当事務所(行政書士三浦国際事務所)への実際のご相談内容を一部変更して構成しています。
YouTubeに投稿する動画の編集を外部に委託したい
はじめまして!
最近、YouTubeへの動画投稿をはじめました。
最初は、企画、撮影、編集と、全て自分で行なっていたのですが、動画数が増えるにあたって、仕事量も増え、自分だけではまわせなくなってきました。
そこで、外部の方に動画の編集を依頼したいと思うのですが、どのような契約を締結すべきかがわからずご相談をさせていただきました。
ありがとうございます。
近年YouTube動画を専門とした編集者の方も増加しており、お伝えいただいた「YouTube動画の編集のみを委託したい」というご相談も増えております。
契約書の種類といたしましては、「業務委託契約書」をご締結いただく必要がございます。
YouTube動画の編集を外部に委託する時の契約書は、「業務委託契約書」
業務委託契約書とは、その名の通り、業務(動画編集)を委託する契約となります。
つまり、社員さんやアルバイトさんとして業務を遂行するのではなく、別々の事業者として、動画編集のみ業務を遂行していただき、その対価を支払うという契約になります。
業務委託契約は、準委任契約と請負契約に別れ、準委任契約は業務の遂行義務のみがある契約、請負契約は成果物の納品義務がある契約となります。
つまり、YouTube動画の編集業務は、動画という成果物の納品義務が発生する業務となりますため、法的には「請負契約」となります。
そのため、動画編集者の方は、「ただ単純に動画を編集すれば良い」ということではなく、委託者の要望(編集内容や納期)に沿い、適切に納品を行う義務があります。
YouTube動画の編集を外部に委託する時の注意点
ありがとうございます。
このような外部に委託するということが初めてなのですが、何か注意点はありますでしょうか??
できる限りトラブルが少ないようにしたいです。
YouTube動画の編集を委託される際の注意点としては、編集者の方のスキルや経験を十分にヒヤリングされるという点にあるかと認識をしております。
いくら契約書に「こうしてほしい。ああしてほしい。」と詳細を記載したところで、編集スキルが不足している場合、思うような動画が仕上がらないということが往々にあるためです。
業務委託契約は相手方との信頼関係が必要不可欠
業務委託契約は、法的には「いつでも双方から契約が解除できる」契約となります。
もちろん、YouTubeの動画編集等の成果物の納品義務がある場合には、「いつでも」ということは実務上は難しいのですが、仮に単純に編集者の方にスキルがない、やる気がないという場合には、契約を解除すべきなのか、それとも根気強く納品を待つのかという選択となってしまう可能性があります。
また、「編集者の方に動画編集のスキルがなく、思うような動画が完成しなかったから契約は解除だ!それに思うような動画じゃなかったから、報酬も支払う必要はないよね。」という考えはトラブルを助長してしまう可能性があり法的には危険です。
編集者の方としては、「契約段階で合意した内容にて動画を編集した。スキルがあるかないかじゃなくて、合意内容は遂行したんだから当然に報酬を支払うべき」という主張をされる可能性が高いためです。
つまり、委託者側は「思うような動画じゃないからダメ」、編集者の方としては「合意内容に沿って編集した」という主張になってしまうと、何をもって「業務を適切に遂行した」かの線引きが難しくなってしまうのです。
そのため、当事者様の関係性が良好で信頼関係がない場合においては、少しの認識の相違で大きなトラブルになってしまうことも予想されます。
不要なトラブルを避けるためには、相手方様のスキルの確認(これまでの編集動画のサンプルを確認する等)と併せて、良好な関係性作りが重要となります。
YouTube動画の編集を、外部に委託する時に締結する契約書に記載する内容
具体的には、どのような内容を契約書に記載しておく必要があるのでしょうか。
YouTube動画の編集を委託される場合の契約への記載事項は、下記の内容等が考えられます。
業務内容(編集内容)
どの動画をどのように編集するかを規定します。
契約段階では特定の動画はなく、都度、ご確認いただく場合には不要です。
当事者様の編集に関する認識の相違が発生しないように擦り合わせることが重要です。
報酬(委託料)
報酬額を定めます。
契約段階にて報酬の定めがない場合には、「都度、協議する」、「都度、見積書等にて確認する」というような記載も可能です。
併せて、支払いサイクル(例:月末締め翌月末払い等)、支払い経費の負担者(例:銀行振込手数料の負担者は委託者等)も規定します。
納期について
いつまでに納品が必要なのかを記載します。
契約段階にて定めがない場合には、「都度、対象動画毎に協議する」、「都度、別紙で確認する」というような記載も可能です。
YouTube動画の納品(検品)について
納品(検品)に関する規定を設けます。
一般的には動画の納品から3日、7日、14日以内など、一定の日数を設け、規定期間内に修正の有無等の判断を行います。
また、規定期間内に特に双方から指摘等がない場合には、規定期間経過をもって、動画が正常に納品されることの規定を設けることも多いです。
理由としては、動画の納品後にどちらからも何ら連絡等がない場合には、正常に納品されたのかどうかが不透明となり、不毛なトラブルに発展してしまう可能性があるためです。
著作権の帰属に関する規定
動画編集した後の動画の著作権がどちらに帰属するのかを定めます。
YouTube動画の編集業務委託契約書で最も重要な規定です。
著作権は少しややこしい部分があり、原動画(つまり、委託者が撮影した動画)の、著作権者は委託者に帰属します。
その原動画を編集者の方が編集をすると、その編集動画の著作権者は編集者の方に帰属します。
つまり、法の原則としては、制作者に著作権が帰属する形となります。
そのため、契約書に何も定めない場合には、
原動画 → 委託者
編集動画 → 編集者の方
に著作権が帰属してしまいます。
つまり、委託者は編集動画を自分のYouTubeチャンネルに投稿する場合には、編集者の方の許諾を得なくてはならなくなってしまいます。
委託者(YouTuber)にとってそのような枠組みとすることは煩わしいですし、何よりも法的なリスク(編集者の方から「自分の編集動画勝手に投稿されている」と主張されてもおかしくないためです)があるため、契約書にて「編集動画の著作権者は委託者に帰属」と明記しておくことが必要です。
私は文化庁公認の著作権相談員としても活動しています。
著作権は譲渡できる権利となりますため、編集動画の著作権を「編集者の方→ 委託者」に譲渡した(帰属される)内容の記載を行うことが実務上重要となります。
実際の契約書は、その他条項も必要となります。上記は重要部分をピックアップしました。
まとめ
・YouTube動画の編集を外部に委託する時には、相手方様のスキルの確認や信頼性の構築が必要
・YouTube動画の編集を、外部に委託する時に締結する契約書において、最も重要な内容は「著作権について」。著作権についての記載がないと、権利者が不透明となり、トラブルに発展しやすいため
行政書士三浦国際事務所では、各種契約書のひな形を販売しています。
「YouTube」のカテゴリーに関する販売契約書一覧は、こちらにおまとめしています。是非、ご活用ください。
・YouTube動画の編集を外部に委託する時の注意点
・YouTube動画の編集を、外部に委託する時に締結する契約書に記載する内容