Contents
行政書士の三浦です。
こちらの記事では、「業務委託契約書」についてご案内をさせて頂いております。
業務委託契約書は、文字通り業務を委託(受託)する際に作成される書面となり、法人個人、業種問わず実務上幅広く作成されるご契約書となります。
近年では、フリーランスの方が増加傾向にあるため、法人様が個人様に業務を委託される際にも作成をされることが多くなっています。
こちらの記事は、業務委託契約書の作成のポイントや注意点など、業務委託契約書に関する網羅的なご案内となります。
業務委託契約書 条項作成のポイント
業務委託契約書に限らず、ご契約は原則的に当事者様の合意がございましたら、どのような内容の記載も可能でございます(しかし、法に反する内容、社会通念上問題となるような内容の場合は、無効となる可能性がございます)
そのため、個々のご状況により記載内容及び検討箇所が異なりますので、この点ご留意ください。
下記は、業務委託契約書を作成される際の一般的な条項のご案内となります。
※甲を受託者(業務を受ける側)、乙を委託者(業務をお願いする側)とします。
委託業務について
どのような業務を委託するのかを明確にする条項となります。
・甲は、下記業務を行うものとする。
(1)〇〇業務
(2)前号に付随する業務
(3)その他、乙が指定する業務
と、箇条書きのようにご記載されることも、
・乙は、〇〇業務(以下「本業務」という)を甲に委託し、甲はこれを受託することを目的とする。
と、文章書きされることも可能です。
こちらの条項作成の目的は、委託業務の内容を明確にされることなので、ご状況に応じて、当事者様双方の業務への認識の相違が発生されないようにされることが大切です。
また、
・乙は、〇〇業務(以下「本業務」という)を甲に委託し、甲はこれを受託することを目的とする。なお、業務の詳細に関しては別紙にて確認するものとする。
というように、業務内容を別紙にて確認することも可能です。業務内容がそれほど多くない場合には、別紙にされる必要は少ないかと思われますが、業務内容が非常に多岐にわたる場合において、図などを用いて業務内容を確認される場合には、別紙を作成されたほうが双方が業務内容を確認しやすくなるかと思われます。
別紙を作成された場合には、当該別紙に「本書は、甲及び乙間にて20〇〇年〇月〇日に締結された業務委託契約書に付随する書面である。」など、業務委託契約書の別紙であることを確認する文言を記載されることも重要となります。
委託料について
業務委託契約において委託料は、様々な形で設定されることが可能です。
一般的には、「〇〇万円を毎月月末締翌月末払いとする」など、毎月の支払いにされる場合が多いですが、委託料を年額で定め一括で支払うとされても(例:1年間の委託料100万円を、本業務委託契約書締結後、速やかに支払う等)、3ヶ月毎に支払う(例:1年間の委託料100万円を、3月、6月、9月、12月に各25万円ずつを支払う等)とされても問題ございません。
また、成功報酬にて委託料を設定されることも可能です(例:顧客を1名獲得する毎に〇〇万円・委託業務に係る月間売上高の〇〇%等)。業務に従事した者及び時間等を明確に示した報告書等の作成が必要となりますが、時給制にてご設定されることも可能です(例:委託業務に従事した者1人あたりの時給金〇〇円等)。委託料とは別に着手金という形で、まとまった金銭のご設定もできます。
委託料の支払い方法は、支払いの証拠を残されるために銀行振込が一般的ですが、受領書等を交付して手渡しでも問題ありません。しかし、実務上、トラブルを避けるために銀行振込とされることが最善かと思われます。
実費負担について
委託業務を遂行される中で、実費が発生する場合には、実費負担者を規定されることが大切です。
交通費、郵送費、消耗品費、その他委託業務に関する実費の負担者について定められることで、トラブル防止となりますが、実費があまり発生されない場合には、信頼関係を基に、特に定められないこともあります(その場合には、各当事者様が負担する実費は、それぞれが負担することになることが多いです)。
報告義務について
業務委託契約は、雇用契約とは異なり、原則的に業務を委託する側に指揮命令権はありません。
そのため、業務を委託する側にとって、随時進捗状況を把握しておきたいということが考えられます。
形式的な条項とはなりますが、
「甲は、乙からの請求があった場合には、業務状況につき速やかに報告するものとする。」
等の記載を行い、双方の認識をすり合わせ、円滑に業務を進められるようにする工夫が必要となります。
通知義務について
例えば、契約期間中に当事者様の法人(個人事業主)の名称が変更となったり、振込先指定口座が変更となった場合には、相手方に通知することを約する条項を記載することもあります。
通知方法としては、「口頭または書面」「変更の事前または事後」等のお取り決め内容を記載します。
しかし、信頼関係が希薄でない限り、本条項においてトラブルに発展されることは少ないかと思われますので、実務上は記載されないことも多いです。
再委託について
再委託とは、業務を受託する側がさらに第三者に業務を委託することです。
業務を委託する側にとっては、自らが認識していない第三者に業務を委託されてしまう可能性がありますので、業務委託契約書の中に、「再委託は禁止とする」という旨の記載を行うことがあります。
業務を委託する側が、「業務を円滑に遂行してくれれば、第三者と協力して業務を行っても良い」という意向であれば、特に再委託の禁止条項を記載される必要はございません。
解除について
業務委託契約は、単発で業務を委託することも可能ですが、一定の期間を設けて業務を遂行することも可能です。
一定の期間にて、業務を遂行する場合においては、契約解除について記載をされることが大切になります。
具体的には、「契約内容に反した場合には契約の一部または全部を解除できる」「破産・民事再生等の申し立てがなされた時は契約の一部または全部を解除できる」「差押え、差押えに準ずる手続きが開始された時は契約の一部または全部を解除できる」などの記載となります。
要するに、業務委託契約を遂行するにあたり、信頼的または資金的に難しい場合には契約の一部または全部を解除できるというする旨の記載となります。
また、相手方の責任により委託業務に損害が生じた場合には、損害賠償請求ができる旨も併せて記載することが一般的です。
実務上、委託業務を進める中で、「相手方が契約内容に反していることの確証は取れないものの、契約内容に反している可能性が高いと考えられる状況」に直面される可能性もあります。
上記状況に陥った際にトラブルに発展しないために、是正処置期間の定めを記載することも可能です。
条文としては、「相手方が相当期間内に是正すべきことを催告したにもかかわらず、その期間内に是正されない場合、相手方は契約の一部または全部を解除できるものとする」等の記載となります。
一方的に相手方に契約違反があると判断し、いきなり契約を解除するという状況はトラブル発展の原因となりますため、是正期間を定め、双方にクールダウンの時間を作り出すことも大切となります。
※現在作成中です。
業務委託契約書のよくあるご質問
収入印紙は必要?
ご契約書は、ご契約書の種類や記載金額により、収入印紙の貼付が必要になる場合がございます。詳細は、国税庁のHPをご確認ください(国税局HP)。
業務委託契約は、原則的に4,000円の収入印紙の貼付が必要となります(3ヶ月以内に終了する業務委託契約の場合には、収入印紙の貼付は不要となります)。
つまり、継続的な業務委託契約の場合には、4,000円の収入印紙を貼付する必要があり、3ヶ月以内の短期的な業務委託契約の場合には貼付は不要です。
しかし、例えば、収入印紙の貼付を避けるために、業務委託契約書の契約期間の条項に、「本契約は、2030年1月1日~2030年3月31日まで効力を有するものとする。ただし、期間満了1ヵ月前までに、甲乙いずれからも別段の申し出がないときは、さらに3ヶ月延長するものとし、以後も同様とする。」と記載をしても、4,000円の収入印紙の貼付義務は避けられません。
3ヶ月以内の短期的な業務委託契約であっても、更新の可能性がある場合には、4,000円の収入印紙を貼付する必要がございますので、この点はご注意ください。
また、3ヶ月以上の継続的な業務委託契約であっても、電子契約(オンライン上にてご契約書を締結されるシステム)にて締結した場合には、4,000円の収入印紙の貼付義務はございません。
収入印紙は、紙媒体のご契約書の場合には貼付義務がありますが、電子上(データ上)でのご契約締結時には収入印紙の貼付は不要となります。
下記がまとめとなります。
取り扱い | |
---|---|
3ヶ月以上の契約 | 4,000円の収入印紙必要 |
3ヶ月以内の契約 | 4,000円の収入印紙不要(ただし、契約更新の可能性がある場合には必要) |
電子契約 | 期間に関わらず収入印紙不要 |