お世話になっております。
クーリングオフについて3点質問があります。
①クーリングオフがそもそも必要なのか?
現在、広告からLINEへリストインし、そこから動画などを発信して、興味があった方には相手側からzoomにて顔出しの説明会に申し込んでもらい行っているのですが、それで契約になる場合でもクーリングオフは適用しなければならないのでしょうか。
契約書を締結するタイミングはそのZoom中ではなく、別日もしくは一度Zoomを終えて時間がある程度経ってからになります。
一方的な電話勧誘というわけではないので、経営側の目線として必要なのかな?と感じているところです。
長期的なプログラムで継続しないと結果は出ないため、数日で結果が出ないと感じて諦めてしまう人が使う手段になってしまうのが嫌だなと感じています。
②クーリングオフが必要な場面と、いらない場面を具体的に知りたい
クーリングオフはどういう時につける必要があるのか、どういう時につけなくていいのか(文言的に曖昧だったりするので、具体的なシチュエーションで知りたい)そもそもつけるつけないは自由(信用として行うもの)なのかも教えていただけると幸いです。
③公式LINEへのクーリングオフの書面で有効になるのか?(数ヶ月でトーク内容が消えてしまう)
消費者側からクーリングオフの解約の連絡がくる場合、法的に公式LINE上の文面でも有効になるのか?半永久的に残るメールでないと有効にならないのであれば、その旨を伝えたいと思います。
以上になります。よろしくお願いいたします。
【ご質問①】クーリングオフがそもそも必要なのか?
結論から申し上げますと、ご提示いただいた事業形態は、特商法の規制対象となり、クーリングオフの適用が義務付けられる可能性が非常に高いと考えられます。
「一方的な電話勧誘というわけではない(=相手から申し込んできた)」ため、不要ではないかとのお考えのようですが、特商法の規制は、勧誘の「きっかけ」がどちらにあるかだけでは決まりません。
法律がクーリング・オフ制度を設けている趣旨は、消費者が「不意打ち的」な勧誘や、十分な情報がないまま、冷静な判断ができない状態で契約してしまうことを防ぐ点にあります。
ご提示いただいたケースには、主に2つの法的論点があります。
1. 「電話勧誘販売」または「訪問販売」に該当する可能性
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広告(不特定多数へのアプローチ)からLINEに誘導し、最終的にZoom(閉鎖的な空間での1対1のやり取り)で説明会(=勧誘)を行っています。
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たとえ消費者がZoomを申し込んだとしても、そのきっかけは貴社の広告・発信であり、一連のプロセスは貴社が主導する販売活動です。
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Zoomでの勧誘は、訪問販売や電話勧誘販売と同等の状況(不意打ち性・密室性)であると法的に評価される可能性が高いです。Zoomを終えた別日に契約するとしても、その契約の意思決定はZoomでの勧誘に強く影響されていると判断されます。
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この場合、特商法上の「電話勧誘販売」または「訪問販売」に該当し、クーリングオフ(8日間)の対象となります。
2. 「特定継続的役務提供」に該当する可能性
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「長期的なプログラムで継続しないと結果は出ない」と仰っている点が、最も重要です。
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特商法では、消費者に一定期間を超える長期間にわたり、一定額を超える対価を伴うサービス(役務)を提供する契約を「特定継続的役務提供」として規制しています。
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これには、エステ、語学教室、家庭教師、パソコン教室、結婚相手紹介サービスなどが指定されていますが、これらに類する「消費者の身体、知識、技能の向上」などを目的とする高額・長期のプログラム(例:高額なビジネスコンサル、自己啓発セミナー、プログラミングスクールなど)も該当する可能性が非常に高いです。
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「特定継続的役務提供」に該当する場合、たとえ消費者が自ら店舗に出向いて契約した場合(=不意打ち性がない場合)であっても、クーリングオフ(8日間)が適用されます。
【経営者としての懸念について】 「数日で結果が出ないと諦めてしまう人が使う手段になる」というご懸念は、経営者として当然のものです。しかし、法律(特商法)は、まさにそのような高額・長期の契約において、消費者が冷静に判断する期間を保障するためにクーリングオフを義務付けています。
この規定を回避しようとすることは、消費者契約法違反や特商法違反(罰則、行政処分の対象)となり、かえって企業の信用を失墜させ、事業継続を困難にする重大なリスクとなります。
【ご質問②】クーリングオフが必要な場面と、いらない場面
クーリングオフは「つけるつけないが自由」なものではなく、特商法やその他の法律(例:保険業法など)で定められた特定の取引類型に該当する場合、法律上の義務として必ず適用しなければならないものです。
1. 必要な場面(具体的なシチュエーション)
法律で定められた特定の取引類型に該当した場合です。主なものは以下の通りです。
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訪問販売:
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例:自宅に営業マンが来て、布団やリフォームの契約をした。
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例:喫茶店や会議室など、店舗「以外」の場所に呼び出されて契約した。(貴社のZoomがこれに類すると判断される可能性があります)
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電話勧誘販売:
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例:業者から電話がかかってきて、勧められるがままに健康食品の定期購入を申し込んだ。
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特定継続的役務提供(前述):
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例:英会話スクールで、1年間・30万円のコースを契約した。
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例:「必ず稼げるようになる」という高額なビジネスコンサル塾(6ヶ月・50万円)を契約した。(貴社のプログラムがこれに該当する可能性があります)
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連鎖販売取引(マルチ商法):
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例:「この商品を紹介すればマージンが入る」と勧誘され、会員登録と商品購入をした。
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業務提供誘引販売取引(内職・モニター商法):
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例:「在宅ワークの仕事を提供する」と言われ、そのために必要な高額な機材や教材を買わされた。
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2. いらない場面(具体的なシチュエーション)
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店舗販売:
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例:消費者が自らの意思でスーパーに行き、野菜を買う。
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例:消費者が自らデパートに行き、洋服を買う。
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(理由:消費者が自分の意思で店に赴き、商品を自由に比較検討できるため、不意打ち性がなく保護の必要性が低いため)
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通信販売(ネット通販など):
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例:Amazonや楽天市場で、消費者が自ら商品を選び、クリックして購入する。
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(理由:消費者が画面を見て、自分のペースで判断できるため、クーリングオフ制度はありません)
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【重要】 ただし、通信販売にはクーリングオフはありませんが、「返品特約」の表示義務があります。もし「返品不可」と分かりやすく表示していない場合、消費者は商品到着後8日以内であれば送料自己負担で返品(契約解除)が可能です。
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貴社のケースは、Zoomでの積極的な勧誘があるため、「通信販売」とは認められない可能性が極めて高いです。
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その他:
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3,000円未満の現金取引。
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乗用車の購入(個別法で規制)。
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消費者が自ら自宅等での契約を「請求」した場合(ただし特定継続的役務提供などは除く)。
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【ご質問③】公式LINEへのクーリングオフの書面で有効になるのか?
はい、公式LINEでの通知も法的に有効です。
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かつてクーリングオフは「書面」(ハガキなど)に限られていましたが、法改正により、2022年6月1日から「電磁的記録」による通知も可能となりました。
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「電磁的記録」とは、Eメール、SMS、そしてLINEやメッセンジャーなどのSNSメッセージ、USBメモリ、事業者が設置する専用フォームなどが含まれます。
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消費者が公式LINEに「クーリングオフします」という意思表示を送信した時点で、法的に有効な通知となります(発信主義)。
【経営者としての懸念について】 「数ヶ月でトーク内容が消えてしまう」というのは、システムの都合であり、消費者の権利行使を妨げる理由にはなりません。
貴社が公式LINEを顧客との連絡窓口として使用している以上、そこで行われたクーリングオフの通知も有効なものとして受け入れ、適切に記録・保存する体制を整備する義務が事業者側にあると考える必要があります。
「LINEは消えてしまうから無効です。メールで送ってください」と主張することは、消費者契約法や特商法の趣旨に反する不当な主張とみなされるリスクが非常に高いです。
おまとめをさせていただくと、クーリングオフの規定に沿って案内をされ、適切にデータ等を保管されることが必要であるかと思われます。











