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この記事を読んでわかること
行政書士・文化庁公認著作権相談員で、SNS法務の専門家として活動しています。
SNSに関する気になるニュースを、ツイッターでつぶやいています。是非、情報収集に活用してください!
このSNS記事の作成経緯
SNSが必要不可欠である現在、SNS関連のトラブルが年々増加しています。
メディアでは未成年のSNSトラブルが報道されることが多いですが、現実的には、トラブルに巻き込まれる方は、20歳〜49歳の年代が大半となっています。
20歳〜49歳はネットを利用する方も多く、加えて、未成年と比べて自由に商品等の購買ができ、ビジネスでもSNSを利用することが多い点を踏まえると当然の結果といえます。
SNSの歴史はまだ浅く、法整備が追いついていないという背景も、相談件数を増やす要因となっています。
本来、どなたにとっても有益なツールであるはずのSNSが、トラブルの要因とならないよう本記事の作成に至りました。
SNSの運用・契約のトラブル事例と防止方法
事例1 SNS運用での誹謗中傷・差別発言などによるトラブル
SNSでの誹謗中傷・差別発言は、社会問題となっていることは周知のことと思います。
発信者としては悪ふざけの部分があっても、受け取り側の認識によっては、悲しい事件に発展してしまうことも少なくありません。
この点、各SNSでは、悪質性のあるアカウントの凍結などの対処を行ってはいますが、根本的な解決には至っていません。
これは、誹謗中傷・差別発言をした発信者側に全ての責任があるのか、もしくはプラットフォーム側に責任があるのかが、世論としても法律的にも明確となっていない部分があるためと考えられます。
「発信者側の意思で発言をしたのだから、発信者が100%の責任を負うべきだ!」との見解もあると思いますし、「プラットフォームで削除などの対処ができるんだから、プラットフォームに責任が無いとも言えないんじゃない??」というような、様々な意見があると思います。
現実的には、個々の状況や発言内容など、個々の事例に応じて判断がなされることとなりますが、誹謗中傷・差別発言(と捉えられる可能性のある発言)は、いかなる理由においても肯定されるものではありません。
SNSでの誹謗中傷・差別発言は、誰もが今日、加害者にも被害者にもなり得ます。
そのため、SNSとの付き合い方は、誰もが考えなくてはなりません。
事例2 SNS経由での商品購入・詐欺などによるトラブル
SNS経由で「商品を勧められた」、「投資の勧誘を受けた」などのご相談を受けることが多くなりました。
この点、SNS経由で「商品を勧める」、「投資の勧誘を行う」こと自体は、(方法にもよりますが)違法行為ではありません。
そのため、SNSを経由して商品を購入すること、投資を行うこと自体は問題ありません。
しかし、SNS経由での勧誘は、あまり良いものではないことが多い(もちろん良いものもあると思います)と、実務を通じて感じています。
これまでのご相談の内容の一例としては、商品の売買に関しては、「高額な商品を勧められた」、「話を進めていくうちに、追加での料金が発生した」、「相手方の素性がわからない」、「商品が届かない」、投資案件に関しては多くの場合「多額の配当金を支払うから金銭を出資してほしいと言われているが、大丈夫か?」というものになります。
上記のように列挙すると途中で異変に気がつきそうですが、相手もプロなので、巧妙に手順を踏んでおり、なかなか気がつけないということも多いようです。
そして、気がついた時には、もうご本人では対処が難しいという状況に陥り、ご相談を受けることが多いです。
事例3 SNSに関する著作権のトラブル
著作権とは、簡単に言うと、「自分が制作した物に対する権利」のことです。
つまり、(全て1人でSNSを運営している場合に)YouTubeの動画を制作した場合、Instagramへの投稿画像を制作した場合、写真を撮影した場合、TikTok用のショート動画を制作した場合などにおける、制作物の著作権者はご自身となります。
なので、SNSに投稿されている動画、画像、写真、イラスト、文章などは、原則的には、全てだれかに著作権が帰属しているということになります。
この著作権というのは、有名なインフルエンサーの方や芸能人だけが有しているものではなくて、子供が制作した物にも権利が発生します。
つまり、有名なインフルエンサーの方が制作しても、全く無名なフォロワーが1人の方が制作しても、小学生が制作しても、著作権は発生し、著作権者は制作者に帰属することになります。
そのため、SNSで気に入った動画、画像、写真、イラスト、文章などを、例えばご自身のブログに記載されるという場合には、適切な引用方法にて記載されるか、またはその著作物を制作した本人の許諾を得ること(許諾に関する契約書締結すること)、または各SNSの利用規約を確認の上、適切な処置をとることが必要となります。
上記の手順を踏まなくては、著作権侵害となる可能性があるためです。
また、(複数人でSNSを運営している場合には)、動画撮影者、動画編集者、写真を撮影した者、写真を加工した者など、それぞれにそれぞれが担当した制作物の著作権が帰属することになる点は注意が必要です(つまり、完成品としての動画や写真は1つであっても、各工程に対して、それぞれ著作権が発生するということになります)。
※著作物の引用方法は下記記事を参照してください。
[clink url=”https://influencer.allworldtraveler.net/copyright-quote-2″]
事例4 SNS関連のビジネス上のトラブル
ビジネスにおけるSNSの重要性は年々高まっており、企業単位または事業単位にてSNSを運用することは一般的となりました。と同時に、SNSをビジネスに利用する際のトラブルも増加傾向にあります。
ビジネス上のSNS運用においては、個人とは異なり、多くの資力や労力が動くことになるため、スタートアップ時点で取り決めを定めておくことが重要となります。
「インフルエンサーの方に案件を依頼する(引き受ける)場合」、「インフルエンサーの方とのマネジメント契約を締結する場合」、「動画やバナー、イラストなどの制作、編集を依頼する(引き受ける)場合」、「SNSの運用を依頼する(引き受ける)場合」など、SNSに付随した契約は多岐に渡ります。
※下記は、当事務所で作成をさせていただいたSNS関連の契約書の一部です。
YouTuberマネジメント契約書 |
VTuberマネジメント契約書 |
インフルエンサーマネジメント契約書 |
動画制作業務委託契約書 |
動画編集業務委託契約書 |
動画企画立案業務委託契約書 |
動画に関するコンサルティング契約書 |
撮影業務委託契約書 |
音楽制作業務委託契約書 |
SNSサムネイル・バナー制作業務委託契約書 |
ツイッター・インスタグラム運用代行契約書(各種SNS運用代行契約書) |
SNSアカウント譲渡契約書 |
(YouTube等への)出演同意書 |
撮影許可契約書 |
YouTuberさん、VTuberさんの企業案件契約書 |
コラボ企画に関する契約書 |
友人や知人と共同でSNSを運営する際の契約書 |
制作物(著作物)の権利者を定める契約書 |
著作権譲渡契約書 |
秘密保持契約書 |
所属タレント、インフルエンサー、プロゲーマー等とのSNS運用に関する誓約書 |
従業員に対する、SNS利用に関する誓約書 |
取引企業とのSNSの取り決めに関する契約書 |
SNSを通じたトラブルに関する示談書 |
事例5 SNSでの炎上
従業員や共同経営者、取引企業の関係者が、SNSで炎上するような(社会的非難を受ける)投稿を行なった際のトラブルも増加しています。
例えば、「従業員が飲食店の店舗内で裸になった画像をSNSで投稿した」、「取引企業の関係者が、社会秩序に反する投稿を行なった」など、考えられることは多岐に渡ります。
SNSの投稿ひとつで大企業の場合には役員の謝罪会見が開かれ逆風が吹いたり、中小企業であれば倒産してしまうことも珍しくありません。
SNSのたったひとつの投稿で、今後数年、数十年と苦しめられる可能性があるということです。
SNSのこれまでの裁判の事例
判例1 SNSによる誹謗中傷
SNSでの誹謗中傷は、よく耳にすることだと思います。
お酒を飲んで気持ちが大きくなっている時、嫌なことがあってイライラしてる時など、自分の心が平常じゃない時に思わずつぶやいてしまい、それが大問題となることも少なくありません。
人間誰もが常に平常心でいることは難しいですが、自分が冷静な判断ができなかったことと、誰かを誹謗中傷してしまう事は別問題となります。
SNSによる誹謗中傷の裁判例は多々あるため、特定の裁判例はこちらではご紹介は致しませんが、個人間における誹謗中傷においても、3,000,000円近い慰謝料の支払い命令が下された判例もあります。
つまり、特定の企業に対する誹謗中傷を繰り返している場合など、相手方企業の損失が大きいと判断された場合、巨額の賠償金を支払わなくてはならなくなる可能性もあります。
この点、SNSでの誹謗中傷を通じて自らの命を立ってしまう方も少なくない現在、今後も、裁判官の心情として厳しく判断がなされてしまうことが予想されるため、SNSとの向き合い方を再検討することが重要です。
判例2 SNSでの詐欺
SNSでの、(特殊)詐欺とは、いわゆる「オレオレ詐欺」や「投資したら儲かりますよ」、「クレジットカード不正利用があったため、こちらのURLからお手続きをしてください」というような謳い文句で行われる詐欺の総称となります。
ニュース、銀行のATM、レターパックなどの郵送物等の日常の中に、詐欺に関する注意の案内は多々ありますが、その注意案内が意味をなさないほど、詐欺師の手口が巧妙になっていると考えられます。
そのため、「これって詐欺かも??」と気がついた時にはもう手遅れとなっていることも少なくありません。
2022年に最高裁判断で、「(特殊)詐欺は、犯行断念でも未遂罪が成立する」 という判断がなされました。
つまり、(特殊)詐欺は詐欺を行い、実際に詐欺師が利益を得た時に成立するということではなく、(特殊)詐欺を行おうと試みた時点で未遂罪ではありますが罪に問われるということになります。
判例3 YouTubeの字幕無断転載における著作権侵害
2021年9月6日に判決がなされたもので、YouTubeの字幕には著作権があり、字幕を無断で転載することは違法という判決になります。
つまり、(動画の内容にもよる部分もあることが予想されますが)YouTubeにアップロードされている動画の字幕は、閲覧者の方がYouTuberの方の許可を得ずに、閲覧者の方が運営しているブログなどに転載することは違法というものとなります。
こちらの判決から読み取れることとしては、閲覧者の方は勝手に字幕を転載しないこと、YouTuberの方においては著作権の帰属先を明確としておくということが重要となります。
「まとめ」SNSでトラブルに巻き込まれないための考え方
SNS利用には、常に一定のリスクがあります。
お酒に酔ってつぶやいてしまった、イライラして誰かを攻撃してしまった、そんな事は誰にでも起こりえることなのです。
また、ビジネス上においてもSNSは切り離せないものとなりました。
そのため、SNSの運用やSNSに関する法律を充分理解しておく事は、現代を生きる上で必要不可欠となります。
SNSの運用次第では、そのビジネス、ひいては企業自体が窮地に追い込まれてしまう可能性があるためです。
SNSでの投稿は、一度投稿してしまうと全てデータを削除する事は現実的に難しくなります。
一度の気の迷いや法律知識の乏しさにより、今後の人生(企業の未来)をリスクにさらしてしまうことは、誰もが避けなければなりません。