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契約書締結時の心理テクニック① 契約の「お得感」を演出する
契約の「お得感」を演出する方法は、特に競合他社がいる場合に有効です。
契約の「お得感」を演出するとは、具体的には、
- 割引やキャンペーンを実施する
- 特典やプレゼントをつける
- 競合他社との比較で優位性をアピールする
などです。
人は、快楽を求め、苦痛を避ける傾向があります。お得感は、快楽の一種であるため、人はお得感に惹かれてしまうのです。
例えば、セールやキャンペーンがあると、ついつい買い物をしてしまうのも、快楽原理の心理が働いていると言えます。
また、人は、希少なものや手に入りにくいものほど、価値があると感じる傾向があります。お得感も、希少性(特別感)と結びついていることが多いため、人はついついお得感に惹かれてしまうのです。
契約締結時において、「あなただけ特別ですよ。」と、契約の相手方に伝えることは、交渉のテクニックとしてとても有効です。
しかし、当然ですが多くの企業が「お得感」を演出しているため、自らのライバルとなる競合他社を調べ、どのようなキャンペーンや割引を行っているかを確認した上で、自社の「お得感」戦略を練る必要があります。
契約書締結時の心理テクニック② 「損失回避」の心理を利用する
人は、得をするよりも損をすることを回避する傾向があります。
契約締結を迷っている相手方に対しては、「損失回避」の心理を利用するのも効果的です。
損失回避の心理とは、人は得をするよりも損をすることを回避する傾向があることです。
損失を回避する心理は、人類の進化の過程で培われたと考えられています。損失を回避することで、危険から身を守り、生き延びる確率を高めることができたからです。
損失回避の心理は、日常生活のさまざまな場面で影響を与えています。
- 買い物をするときに、少しでも安く買うために値引き交渉をする
- 投資をするときに、損失を出すのを恐れて、リスクを避けた投資をする
といった行動は、すべて損失回避の心理が働いていると言えます。
損失回避の心理は、マーケティングや交渉などにも活用されています。
- 割引や特典をつけて、損失感を軽減する
- 限定数量や限定期間を設けて、焦りを与える
といった方法は、損失回避の心理を利用して、相手の意思決定を促す効果があります。
しかし、合理的な判断を妨げることもあるため、注意が必要です。
- 損失を回避するために、本来得られる利益を逃してしまう
- 損失を回避するために、リスクを過度に回避する
といった行動は、損失回避の心理が行き過ぎた結果として起こり得ます。
つまり、契約の相手方に「できれば、損をしたくないなぁ」と思わせるのは有効ですが、「絶対に、損をしたくない!!」と強く思われてしまうと、リスクを過度に回避し、逆効果となることもあるということです。
そのため、損失回避の心理を利用する場合には、相手方の顔色や、立場や役職などを考慮し、どの程度までのリスクを許容してもらえるかを、事前にシミュレーションしておくことが重要です。
契約書締結時の心理テクニック③ 「時間的制約」を設ける
人は、時間的制約を設けないと、決断を後回しにしてしまう傾向があります。
時間的制約とは、ある事柄を完了するために利用できる時間が限られていることを指します。時間的制約は、日常生活のさまざまな場面で起こり得ます。例えば、
- 試験勉強をするときに、限られた時間の中で効率的に学習しなければならない
- プロジェクトを完了するために、期限までに必要な作業をすべて終わらせなければならない
- 旅行の計画を立てるときに、限られた時間の中で目的地やスケジュールを決めなければならない
といった場面では、時間的制約が生じます。
時間的制約は、人の行動に大きな影響を与えます。
時間的制約があると、人は焦りを感じ、効率的に行動するようになり、不要な作業を省略するようになります。
その影響を基に、マーケティングや交渉などにも活用されています。例えば、
- 限定数量や限定期間を設けて、焦りを与え、契約締結の意思決定を促す
- 他社との比較検討の時間を制限して(契約締結ができる最終の時間を設け)、選択肢を狭め、自社製品やサービスの選択を促す
といった方法は、時間的制約を利用して、相手の意思決定を促しています。
つまり、相手方に対して、時間的制約をうまく適用させることで、交渉がスムーズにいく可能性が高くなるということです。
しかし、こちらも、時間的制約が行き過ぎると、相手方がストレスやプレッシャーを感じたり、合理的な判断ができず、「損失を出さないようにひとまず契約締結は、一旦保留しよう」と思われてしまうため、注意が必要です。
契約書締結時の心理テクニック④ 「権威」や「信頼感」をアピールする
人は、自分には無いものをもっている人に対して、自分より優れていると思います。つまり、上場企業を作り上げた起業家、名だたる投資家などの前では、(自分のほうが優れている部分は多くあるにも関わらず)、(ビジネス上では)相手の権威に負け、服従してしまう傾向にあるのです。
契約締結の際には、相手に「権威」や「信頼感」を感じさせることで、契約締結の意思決定を促すことができます。具体的には、以下のような方法があります。
- 業界や専門分野における実績や信頼性をアピールする
- 第三者からの推薦や評価を示す
しかし、「権威」や「信頼感」を感じさせる心理テクニックは、逆に相手に不快感を与えてしまったり、不信感を感じられてしまうこともあります。例えば、
- 権威を示すつもりが、単純に自社(自ら)の功績や地位の「自慢」となってしまっているような場合
- 信頼感を与えようと、「これまでの満足度99%!」「顧客満足度No1」など、信憑性に欠ける提案をしてしまっているような場合
などがあげられます。
そのため、「権威」や「信頼感」を与えるテクニックは、提案書へさらっと記載しておく、話の流れでさらっと伝えるなど、過度にならないことが重要です。
本来、「権威」や「信頼感」は、相手方が自然と感じる(受け取る)もので、誇示するものではないためです。
まとめ
上記のテクニックを過度に行ってしまうと逆効果となる可能性が高いので注意が必要ですが、上記テクニックを駆使することで、交渉が有利に進むことも多いでしょう。
私は、行政書士として、(他社様に帯同して)数多くの契約締結の場面を経験しましたが、 サービス(商品)は良いのに交渉で滞ってしまう場合、ちょっとした心理的な要因で(交渉において相手方が不快感を示して)契約の相手方が締結を拒む場面も数多く目にしてきました。
いくら良いサービス(商品)を提供していても、契約を締結することができない場合には、サービス(商品)が存在する意味が全く無くなってしまうため、契約書の内容自体もそうですが、契約締結時の交渉テクニックも、同様に重要と言えます。
・契約の「お得感」を演出する
・「損失回避」の心理を利用する
・「時間的制約」を設ける
・「権威」や「信頼感」をアピールする
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こちらの記事は、「契約(書)の締結時における心理テクニック」をご紹介しています。