契約書は、一言で表すと、当事者間で合意した内容を明確に記載した文書です。
法的には、「契約書を作成する義務」は無いため、契約書を作成しなくても違法ではありません。
しかし、契約書があることで、当事者間で合意した内容をいつでも確認することができ、誤解やトラブルを防ぐことができるため、実務上は必須であると考えられます。
契約書を締結する3つの意味① 当事者間の合意を明確にできるため
「エビングハウスの忘却曲線」では、1時間後に約50%忘れ、1日後には約70%を忘れてしまうと示しています。「契約の内容」という重要な内容(印象に残る内容)は、「エビングハウスの忘却曲線」には当てはまらないとも考えられていますが、人間が時間とともに記憶が曖昧になることは事実であるため、契約書にて合意内容を残しておくことはとても重要です。
契約書は、当事者間で合意した内容を客観的に記録できる
契約書は、当事者間で合意した内容を、具体的かつ明確に記載する文書であり、当事者間の合意内容を客観的に残すことができます。
つまり、口頭で合意した内容も、文書として表すと自らの意向と相手方の意向が、少しずれてしまっていることも実務上は多いため、客観的かつ明確な文書にて作成された契約書があることで、お互いの意向の相違がないことを確認できます。
契約書は、当事者間で合意した内容を再確認する機会を提供する
契約書を作成することで、当事者間で合意した内容を再確認する機会を得ることができます。
契約書締結後、契約書に記載された内容を確認することで、当事者間で合意した内容を(お互いが)遂行できているか、義務の懈怠はないかなどを、随時確認することができるため、相手方との不要な協議やトラブルを防止できる可能性が高くなります。
契約書は、当事者間で合意した内容を遵守する意識を高める
契約書を締結することで、当事者間で合意した内容を遵守する意識が高まるという点も契約書締結のメリットです。
こちらは、法律的というよりも、心理的な部分ではありますが、人間は一度決めたことを変更することはめんどうだと考えて、よほどの自らに不利な契約内容となっていない場合には、そのまま契約を遂行することを決断することも多くあります。
また、契約をそのまま遂行することのほうが、改めて相手方と協議して時間と労力を消費するよりもメリットがあると考え、思考を停止してしまうということもあります。
「そのまま契約を遂行する」「思考を停止してしまう」ことが、自らのデメリットになっている場合には相手方との再協議の場を設けるなどの対処が必要となりますが、契約が順調に進み、かつ、当事者双方にとって契約遂行が円滑に進んでいる場合には、契約内容が適切であったとも考えられます。
逆に言い換えれば、「そのまま契約を遂行する」「思考を停止してしまう」状態になれるような、適切かつ明確な契約書を締結しておくことが、実務上は必要とも考えられます。
契約書を締結する3つの意味② 契約の履行を担保できるため
契約を締結すると、法的な遵守義務が発生します。つまり、「契約を締結したけれど、なんとなくめんどうだから辞めた!」という自分本位の決断が、法的にできなくなります。
契約書は、当事者間の権利義務を明確にする
契約書には、当事者間の権利義務を記載するため、権利関係を明確にすることができ、トラブルを未然に防止することができます。
また、契約書に記載された権利義務に基づいて、当事者間の紛争を解決することができる可能性も高くなります。
改めて、契約書を読み直すことで、当事者双方のすべきこと(権利義務)が明確となるためです。
仮に、裁判となった場合には、裁判所が当事者間の合意を(契約書の内容を)尊重して判断することとなるため、当事者にとってフェアな(当事者の合意内容に沿った)判決が出る可能性が高くなります。
契約書は、当事者間の信頼関係を構築する
契約書は、当事者間の信頼関係を構築するために役立つというメリットもあります。
契約書を作成せずに契約を遂行することも実務上はありますが、上場企業など、社会的な責任が大きい企業では契約書を締結せず、契約を遂行するということは、まず考えられません。
上場企業では、株主や債権者、行政など、多くの目があるため、契約内容を明確に残しておかなくては、以後、トラブルが発生した時の対処が難しくなるためです。
中小企業や個人事業主の場合には、契約書を締結されないこともありますが、契約の相手方としては不安を感じたり、事業者としての素質を問われてしまうことにもなりかねないため、契約書締結を通じて当事者間の信頼関係が構築することはとても重要となります。
契約書を締結する3つの意味③ 紛争を未然に防ぐことができるため
契約書を締結しておかないと、「言った言わない」、「合意したしていない」というような、不問なトラブルが発生する可能性が高くなります。人は、無意識の内に、事実を自分の都合の良いように組み替えてしまうためです。
契約書は、当事者間の合意内容を法的な効力を持たせることができる
契約書は、当事者間の合意内容を法的な効力を持たせるものであり、契約書に記載された内容は当事者間の合意内容を客観的に記録するものです。
契約書は、よほど支離滅裂な内容でない限り、裁判においても証拠として認められ、契約書に記載された内容を履行しない当事者は、損害賠償などの責任を負うことになります。
まとめ
契約書は、
・当事者間の合意を明確にでき、
・契約の履行を担保でき、
・紛争を未然に防ぐことができる
ものです。
契約書を作成する法的な義務はありませんが、
・トラブルの防止、
・継続的な事業の遂行、
・契約の相手方との信頼関係
を考慮すると、実務上は契約書の存在は必須のものでもあると考えられます。
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こちらの記事は、「契約書を締結する意味」についてご紹介しています。